New York をテーマに選んで作品をつくり、この夏大会に挑んで来ました。その夏が終わろうとしています。6月に引退ライブがあって、そのあとすぐに期末考査、期末が終了後は2年生が出場するチームダンス選手権の関西予選。New Yorkを本格的に練習し始めたのは7月24日。

その後も、オープンキャンパスやら模試やらでなかなか全員が集まって練習する日がない。そんな制約がありつつ練習するのもまた高校の部活動ではあります。

そしてむかえた8月2日、東京代々木でのDCC。映像審査を通過しての全国決勝大会。当然優勝しか考えてない中での大会はFINAL STAGEに進んだものの、何の賞にもかからず終了。100校を越える大会エントリー中、最終の12校には残ることができた。

ただやはり、練習不足は否めなかった。作品を踊りきれていない。作品のよさを表現しきれていない。

ところが、生徒らはそう思わなかった。この作品では勝てない、と思った。優勝できないと。

8月4日、生徒らは話し合いをもった。顧問の指示でもなんでもなく、生徒たちはこの作品をどうするか集まって話し合うことにしたのだ。正直なところ、いったい何を話し合うのか、と思いつつも話し合いたいという生徒たちに教室を提供するしかない。

4時間も話し合った。結論など出るわけがない。果てしない迷走がはじまる。信じていた作品がまったく評価されなかった。このままでは最後の大会が何もないまま終わってしまう。勝つためにどうすればよいのか。

周囲の声の否定的な部分だけを拾い集め、どんどん深い穴にはまり込んでゆく。この状況ではもはや顧問の言葉は、一ミリも届かない。そもそも顧問はこの作品はどこにも負けない、「New York」で優勝できると何度も断言してきたではないか。結果何も賞を獲得出来なかった。昨年特別賞をもらったこの大会で、去年より後退しているではないか。

勝つためにどうすればよいのか。

ああ 完璧に迷走してる。勝つことにこだわりすぎて勝つことが目的化してしまっている。だが方向を見失った船はその航路を修正することができず、目指すべき港もわからなくなったまま。

結果が出なかったのは、練習不足であり、必要なことは話し合うことではなく、ひたすら踊ること。踊る量がまったく足りていない。この作品の質を徹底的に上げなければならない。作品に変更を加え続けるのではなく、踊り込むこと。勝つためにすべきことはシンプルにそれだけ。お前ら、練習不足やで、勝てなかったのはそれが理由、と言ってみたけど、案の定生徒らは耳を傾けることがない。

そもそも勝つことが目的化してしまっては一条のダンスの本質が失われてしまう。勝つことを目標にして全力を尽くす。それだけでよいはずなのに。それが俺たちのダンスやろ。これでは逆に絶対に勝てない。

8月5日、先輩たちに来てもらった。何してるんですか。これ何の練習ですか。どうしてこんなに元気がないんですか。もっと必死で踊らないと後悔だけが残りますよ。審査員に評価されなかったことで自信なくしてどうするんですか。これでは一条の積み上げてきたものがなくなってしまう。先生、もっと楽しく踊るように後輩たちに伝えてください、とご飯を食べながら後輩たちに最後のアドバイス。

8月6日、何も変わらなかった。

8月7日、何も変わらない。ずっと練習を黙って見続けてきたけれど、とうとう限界だった。お前らは神戸で終わる、確実に予選で敗退する。こんなチーム今まで見たことがない。今までで最悪のチームや。優勝なんて出来るわけがない。などと、言い捨てたように記憶している。

そして8月8日、この日が最後のチャンスであると考えていた。この日変わらなければ、ほんとうに神戸で終わる。今のチームの状態、生徒たちが陥っている深い穴、今本当に必要なことを簡単にクマPOOさんに伝えた。

奇跡としか言いようがないけれど、腹話術のようにクマPOOさんから俺の伝えたいことが生徒たちに伝えられてゆく。こんなこともあるんやな。生徒らが蘇生していくのがわかる。これをきっかけにして変わらなければならない。

8月9日、10日、11日、よい練習ができたと思う。

8月12日、ダンススタジアム、神戸での予選を通過する。

8月17日、全国決勝大会。パシフィコ横浜で優秀賞を受賞。全国でベスト8。目指していた結果ではなかったけれど、生徒たちはこの結果を心から喜んでいたように思う。どこの受賞校よりも、ひょっとしたら優勝校よりも。それがすべてを物語っている。

目標をもって全力でたたかうこと。自分たちのダンスを最後までやりきること。大切なことはそういうことです。今回はたまたま評価していただいたけれど、もちろん手ぶらで帰ることもある。

全力で一緒に踊ってくれる仲間がいること。それを忘れないように。2016年の夏を。

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